手術症例の解説

自然にバストアップ

 

バストアップの手術を受ける方は以下のような希望で来院されます。

 

もともとあまり大きくないので人並みにくらいのバストにしたい

授乳後小さくなってしまったのでもとに戻したい

今のバストをさらに大きくしたい

 

いずれも現在の胸が小さいか張りがないために綺麗なバストラインがでていないので、バストアップ(豊胸術)を希望して来院されます。

 

豊胸術の種類

豊胸術には、脂肪注入、シリコンバック、ヒアルロン酸注入の3つの手術方法があります。希望する大きさを一番に考えて手術方法を選択すると以下のようになります。

 

1サイズまでのバストアップなら、脂肪注入、シリコンバック、ヒアルロン酸など、どの手術方法も選択肢です。

1サイズから2サイズくらいまでのバストアップを希望する方は、脂肪注入またはシリコンバックが選択肢です。

2カップ、3カップ以上のバストアップを希望ならば間違いなく、シリコンバックによる豊胸術を選択して欲しいと思います。

 

図MM種類と特徴.jpg

どの手術方法を選択するかによって、大きさ、柔らかさ、形が違ってきます。また何に自然さを求めるかによってお勧めできる手術方法は異なります。

 

バストアップに対する希望が、カウンセリング後に多少変わることはよくあります。それは豊胸術を希望される方が、単に大きさだけを求めているのではないからです。大きさが決まれば次に希望することは、手で触れてもわからないくらい柔らかい胸であったり、仰向けに寝た時も流れるような胸であったり、レントゲン写真でも豊胸術をしたとわからないことなどです。これらの希望に共通することは、限りなく自然に近い胸ということです。

 

これらすべての希望を叶えるのであれば脂肪注入が最も良いのですが、脂肪注入は大きさの点でブラジャーのサイズで1サイズから2サイズまでのバストアップに限られます。

 

柔らかな自然なバストとなるためには

 

脂肪注入の場合

現在のバストがどのような形、大きさであっても、また今までに授乳をしていてもしていいなくても柔らかく自然な胸となるでしょう。胸を触った感じはとても自然で、見た目の形も非常にナチュラルで、両脇に力を入れても、仰向けに寝てもシリコンバックで時々見られるような硬さはなく、また仰向けに寝ると自然に流れていくまさしく自分の胸が自然に大きくなった印象となります。

欠点としては、最大で2サイズのバストアップまでが限界ということと、まれにしこりとなることがあるということです。

 

シリコンバックの場合

手術を受ける前の元々のバストがどのくらいかによって、手術後の柔らかさは変わってきます。バックをどの深さに入れるかによって柔らかさは異なってきますが、一般的にシリコンバックの場合、元々の胸が大きくないほどバックを触れやすくなる傾向がでてきます。

 

手術前のバストサイズ

Aカップの方は、バックやその辺縁が少し手で触れてわかることがあります

Bカップ以上あれば、シリコンバックは手で触れにくく柔らかい胸となります

 

但しシリコンバックに限らずバックを入れる手術の場合、手術後にバック周囲の自分の組織(被膜)が硬くなることがあります。これは被膜拘縮という、生体のバックに対する反応です。被膜拘縮を生じれば、バックは硬くなり痛みを生じることもあります。

 

被膜拘縮の主な原因

①    各個人の傷の治り方に依存し、体質によることが多い

②    手術中の出血

③    手術操作で、丁寧な剥離操作という手術手技にも依存する

 

近年程度被膜拘縮を少なくさせることはある程度可能ですが、手術後の経過を見なければはっきりとわからないこともあります。

 

ヒアルロン酸の注入の場合

片側の胸に30ml程度の注入(ブラジャーに入れるパッドくらいの大きさ)であれば、かなりやわらかな仕上がりになります。多く注入するほど胸は硬くなってしまいます。片側50~60mlくらいまでの注入が、柔らかさの点で自然な仕上がりとなるのでお勧めです。

 

 

最後に

豊胸術を受けられる方に共通するのは、少なくとも今よりもバストを大きくしたいという希望です。ただし、実際手術となると少しでも自然に近い胸を希望されることは当然のことです。

豊胸術の手術にはそれぞれの特徴もあり、もしかすると手術方法の選択によっては当初予想していた結果とは異なるということもあるかもしれません。手術後の結果を少しでも希望に近づけるためには、担当医とじっくりと相談をして最良の方法で手術を受けて頂くことです。そして、その結果に満足して手術後の最終検診の時に笑顔で帰って頂ければ幸いです。

 

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豊胸術 | 2015.04.24

 

豊胸術には脂肪注入、ヒアルロン酸注入、シリコンバックという3つの方法があります

これから説明したいことは、これら3つの豊胸術のうち脂肪注入に関する最新の医学情です。

 

脂肪注入による主な合併症(手術の伴って起こりうる欠点)は、以下の2つです。

感染(化膿)

腫瘤(しこり)と石灰化(レントゲンで写る白い影)

 

感染(化膿)

手術で何よりも大切なことは化膿させないことです。脂肪注入に限らずすべての手術では、まれではありますが化膿は手術後に起こり得ることです。

脂肪注入後に化膿を起こしてしまうと脂肪は全く生着しなくなり、手術の結果はゼロまたはゼロ以下となります。すなわち化膿すれば胸の大きさは手術前と全く変わらず、最悪の場合膿を排出させるための傷口を胸に残してしまうだけの結果となるのです。

残念ながら手術後に化膿をおこす可能性をゼロにはできません。

 

どうすれば化膿を起こしにくくできるのでしょうか?

 

化膿を起こしにくくするためには、できるだけ念入りに消毒することと抗生剤(化膿どめ)を投与することが重要です。担当医によって消毒の仕方が異なるので、化膿を起こしにくくするかどうかはまさに担当医次第です。

手術時の消毒では、皮膚に付着した細菌はゼロにはできないのです。体のどこかに傷を入れるという操作によって手術が始まります。その創部から入った細菌は体内で増殖し始めます。しっかりとした消毒によって皮膚の細菌の数が極めてわずかとなっていれば、体内に細菌は全く混入しないかもしれませんし、非常にわずかの細菌であれば抗生剤でその細菌の増殖を防ぐことができます。

抗生剤は細菌の増殖が始まった手術中ではなく、手術の始まる前に点滴で投与することも重要です。

どうすれば化膿を起こしにくくできるのかは、いかに念入りに消毒を行うか、手術中に細菌が混入しないように配慮すること、抗生剤の投与の仕方などの担当医の判断に依存します。

化膿を起こさないような担当医であれば消毒の仕方や抗生剤の使用方法はいつも同じなので、化膿を起こすことはきわめて少ないと思います。

 

腫瘤(しこり)と石灰化(レントゲンで白い影として映る)

 

どのようにして腫瘤(しこり)と石灰化を起こすのか?

 

注入した脂肪は、正常の脂肪細胞として生き残って生着するものと壊死(生き残らずに死んでしまう)するものとに分かれます。さらに壊死したものは吸収され分解されるものと、吸収分解されずに油滴(脂肪のうちの油部分)や腫瘤(しこり)と残ってしまうものとに分かれます。これらの油滴や腫瘤は、数ミリのものから数センチのものまでその大きさは大小様々です。また壊死した脂肪に体内に存在するカルシウムが沈着して、レントゲン写真で白い影として写ることがあります

簡単に言えば、生きた脂肪細胞として生着する割合が多いほど腫瘤(しこり)と石灰化を生じにくくなります。注入した脂肪が多く残るということは、手術後に十分な大きさの胸が得られるということにもつながります。

 

それではどうすれば脂肪細胞が生着する割合を多くできるのでしょうか?

 

脂肪注入で生着率を増加させる方法


(1)脂肪の精製方法

脂肪注入においては、吸引した脂肪をそのまま注入することはまず行わず、何らかの精製方法で不純物を取り除いたのち胸に注入していきます。

吸引で得られた脂肪組織の精製度が上がるほどより多くの不純物が取り除かれ、その結果脂肪の定着率が上がります。脂肪の精製法だけに限って定着率を比較すれば、定着率の良い順番は以下のとおりです。

 

1 コンデンスリッチ(遠心分離の後、脂肪細胞のうち良質の脂肪のみを分離する方法)

脂肪吸引でダメージを受けてしこりとなる細胞も遠心分離によって取り除くことができます。

コンデンスリッチはしこりとなりにくいことが特徴です。

 

遠心分離によって濃縮脂肪を注入するので、

 ピュアグラフトよりも生着率が高いのがもう一つの特徴です。

生着率およびしこりになりにくいという点で、最良の方法です。

 

2 遠心分離のみ(採取した脂肪組織を洗浄した後、血液成分や不必要な水分を可能な限り取り除く方法で、生着しないと考えられる脂肪組織が含まれる)

遠心分離によっての濃縮脂肪を注入することが可能となりました。

コンデンスリッチにの次に生着率が高い方法です。

 

3 ピュアグラフト(遠心分離を用いた根本的な分離は行わず、主に血液成分を生理食塩水でで洗い流す方法で、不必要な水分と生着しないと考えられる脂肪組織が含まれる)

脂肪吸引でダメージを受けた生着しない脂肪も注入してしまうので、コンデンスリッチに比べてしこりになりやすくなります。

生着率およびしこりになりにくいという点では、ピュアグラフトはコンデンスリッチに劣る。

 

 

 

 

4 医療キットを使用しない脂肪の濾過方法(最も多くの不純物が含まれる)

 

 

これらの操作には、担当医の技術はそれほど関与しません。どの方法を選択するかということは施設及び担当医の判断によります。

但しここで非常に重要なことは、これらの選択枝のうち良質な脂肪を精製させるコンデンスリッチを選んだとしても、それは生着率に影響を与える様々な要素のうちの一つを選んだということに過ぎず、十分な大きさの胸が得られるという保証にはなりません。たとえば最初に言及したように、手術中に注入する脂肪に細菌が混入してしまえば、化膿をおこし手術は台無しになってしまいます。

すなわち、脂肪の精製方法以外にも定着率を上げるための重要な要素が複数あり単に精製方法だけで手術を決めるのではなく、精製方法以外のこれまでに述べてきたことやこれから下記に述べることも考慮したうえで総合的に判断することが重要となります。

 

(2)幹細胞の注入

脂肪注入に関して、最近よく幹細胞という言葉を耳にすることと思います。幹細胞とは脂肪細胞の周囲に存在する細胞です。注入した脂肪が生きた脂肪として生着するためには、脂肪細胞と同時に幹細胞の存在が必要だということが最近の研究でわかってきました。幹細胞は、脂肪組織周囲に存在するので脂肪吸引によって脂肪と一緒に吸引されます。


幹細胞は通常の精製方法で精製した脂肪組織の中にはすべて含まれているので、幹細胞だけに関して言えば前述の4種類のうちどの脂肪精製方法を選択しても、生着率に大きな差はないのではと考えています。

脂肪の生着率を増加させるために最近では幹細胞を培養してより多くの幹細胞を脂肪と同時に注入することが可能になりました。しかし培養した幹細胞を用いることの安全性に対しては議論の余地があるので、私自身は培養した幹細胞は現在のところ用いていません。

 

(3)注入手技

次にいかに生着率を上げるかの非常に重要な鍵を握っているのが、注入の仕方です。注入の手技は、担当医の技量と経験次第だと思います。下記のような手術操作に注意をして、丁寧にかつ手際良く行えばきれいで柔らかな大きな胸にさらに一歩近づきます。

 

1カ所に注入が偏ると必ずしこりを生じます

乳腺以外の組織に、少量ずつ散りばめて注入します

ただ単に多く入れるだけでは、内圧が高まり脂肪の壊死を生じます

苦労して精製して得られた貴重な脂肪に損傷を加えないように配慮しながら注入します

 

 

(4)体外式乳房拡張器(商品名Brava)を使用するかどうか

乳房に陰圧をかけて乳房を大きくさせる医療機器(Brava)がありますが、脂肪注入を同時に行わなければ、その機器単独ではあまり効果が得られません。しかしこの機器の使用に伴う作用が、豊胸術における脂肪注入に有効です。

すなわち体外式乳房拡張器のBravaには、血流増加作用や皮下組織拡張作用があり、これらの作用が脂肪注入後の脂肪の定着率を増加させるのです。

 

1)血流の豊富な組織に注入する

注入された脂肪は、血液の豊富な部位に注入すれば、多くの血流によって栄養されやくなるので生着率が上がります。筋肉の中には多くの血管があるので、大胸筋内に脂肪を注入することは極めて生着しやすいと考えられます。しかし、注入できる大胸筋のボリュームには限りがあるので、実際の脂肪注入では大胸筋も含め乳腺以外の部位に注入します。

これまで脂肪注入による豊胸術では、脂肪の採取方法、精製方法、注入手技のみが議論されてきました。

それは脂肪を注入する部位の血流は変わらないという前提のもとでの議論および手術手技の改良方法でした。ところが最近では、手術前の1ヶ月間の簡単な処置で胸の血流を良くしたのち脂肪注入を行うことにより、今までよりも定着率がさらに上がるという報告があります。

Bravaという体外式乳房拡張器を手術前の1ヶ月間装着することで、胸の皮下組織への血流が増加し、その結果として定着率が上がるという報告があります。

 

2)脂肪注入できる皮下組織を拡張させて注入層を厚くする

脂肪を注入できる皮下の容積が多ければ多いほど脂肪を多く注入できます。体外式乳房拡張器のBravaの術前1か月の装着により、脂肪を注入できる部位の容積を増やせるので、定着率も上がります。

 

3)注入後の胸に圧がかかりにくいこと

手術後は手術操作による炎症のために注入した部位の組織の圧が上昇します。また多くの脂肪を注入すると注入部位の圧が上昇します。注入部位の圧の上昇によって、注入された脂肪細胞がダメージを受け生着率が低下します。つまり脂肪注入後に圧が高ければその圧を下げることも重要となります。胸全体の圧の上昇を抑える働きがある体外式乳房拡張器(商品名: Brava)を術後にも使用することは、今までよりも多くの脂肪を注入することを可能にし、その定着率を上げることができると考えられます。

 

今まで、脂肪注入の生着率を上げる方法について説明してきました。

最後に胸への脂肪注入で、いかに化膿させず、しこりを生じさせず、石灰化を起こさず、そしてその結果として今よりも大きな張りのあるしっかりと定着させるために、そして満足のいく結果を出すためにはまさにこれまで述べてきたひとつひとつの要因の積み重ねと言えるでしょう。

 

まとめ

脂肪注入で腫瘤(しこり)や石灰化をできる限り生じにくくして、生着率を最大限に上げるための要素は以下の4項目です。

感染(化膿)を起こさない消毒と抗生剤の投与

担当医の手術手技

吸引した脂肪の精製方法のうち、最も生着率の高いCRF(コンデンスリッチファット)を選択するのかその他の精製方法を選択するのか

体外式乳房拡張器Bravaを使用するかどうか

 

最後にこの最新の脂肪注入に関する医療情報が、この文章を読まれた方にとって少しでも参考になることを願っております。

 

リッツ美容外科高松院

院長 古屋 富治雄

 

 

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豊胸術 | 2014.07.26

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